消費者の価値観は時代とともに変化するため、10年前は企業の戦略上有効に働いていた戦略であっても、現代では通用しない場合があります。
こうした価値観の変化に応じて、最適な戦略を練り直すことで、ブランドへの理解やロイヤルティの獲得を目指します。
近年は技術力の向上に伴い製品の質自体で物の良し悪しを把握することが難しくなり、ブランディングを行い自社ブランドへの愛着を生み出すことが重要視されています。
ただし、自社ブランドへの評価が常に一定であるとは限りません。もし、今の戦略が顧客とのエンゲージメントに寄与していないと感じたときには、戦略の練り直しが有効です。
今回はブランドを作り直すために行う「リブランディング」の実施事例を、食品やアパレル分野を中心に9つ紹介します。
消費者の価値観は時代とともに変化するため、10年前は企業の戦略上有効に働いていた戦略であっても、現代では通用しない場合があります。
こうした価値観の変化に応じて、最適な戦略を練り直すことで、ブランドへの理解やロイヤルティの獲得を目指します。
リブランディングでは戦略の他に、コンテンツやビジュアルの変更も行います。
上記の1〜3、特に1〜2は大きな期待も持てますが一方で外した時のリスクは大きなものがあります。
対して、クリエイティブの変更は比較的低リスクで実施できますので、ここをテスト的に実施することもひとつの戦略ではないでしょうか。言葉やビジュアルの力で顧客の情緒的価値を刺激し、効果的に他社との差別化を図りましょう。
リブランディングはBtoBビジネスよりもBtoCビジネスにおいて特に効果を発揮します。
以下に簡単ではありますがリブランディングの成功事例について9つ紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
成功事例①「ポテトチップス老舗」というポジションの確立|湖池屋
ポテトチップスメーカーの湖池屋は2016年のリブランディングで、コモディティ化や価格競争を避け、競合との差別化に成功している好例です。
具体的には、漢字ロゴとシックでシンプルな白黒ベースのロゴを通し、日本初のポテトチップス量産化を達成した老舗のイメージや高級感を演出したそうです。
結果、安価なポテトチップス市場でのプレミアム商品カテゴリーとして、イメージの定着に成功しています。
成功事例②「ココナッツサブレ」若年層の取り込み|日清シスコ
1965年に生まれて長く親しまれてきた「ココナッツサブレ」は、若年層を取り込めずにユーザーが高齢化していました。
50周年を迎えた2015年を機に、女性アイドルグループ「私立恵比寿中学(エビ中)」とコラボを開始。新商品は可愛さとレトロ感のあるデザインで、バリエーションを持たせたパッケージを採用しています。
その後も食べやすい小袋への変更や、プレゼントする習慣を提案するプロモーションを実施して、リブランディングから3年で売上を大きく伸ばしました。
成功事例③「かっぱ寿司」安かろう悪かろうイメージを払拭|カッパ・クリエイト
かっぱ寿司は2010年代に入って他社との競争に晒され、差別化が急務でした。
そのため2016年にリブランディングを行い、ロゴや店舗のデザインを変更。さらに社員からの提案による新メニューの投入やイベントを実施しました。
ロゴは従来の河童のキャラクターから積み重なったお皿のグラフィックに変更。店舗もおしゃれで清潔感のあるイメージでリニューアルし、メニューなどのデザインも一新しました。
これによって従来の「安かろう悪かろう」イメージを払拭し、生まれ変わった「かっぱ寿司」を印象づけています。
成功事例④レア商品などの流行販売から文化づくりへ転換|SOUSOU
SOUSOUは独創性に富んだデザインの和服を提供する京都のアパレル店です。
同店は当初、流行に合わせて海外の高級志向のレア商品を販売するセレクトショップでした。その後デザイナーと協力関係を結び、モダンにアレンジされた和のデザイン企業へリブランディングをしたようです。
現在では家のデザインにも着手し、新たな和の文化づくりに取り組んでいます。
成功事例⑤ファストファッションから高級路線へ移行|ユニクロ
ユニクロは当初安価なファッションブランドとして認知されていました。
しかし、競合他社が市場で勢力を増しコモディティ化が進んでしまったため、リブランディングの道を選んだようです。
安くてダサいというイメージを払拭するために、圧倒的な品質追求はもちろんですが、リーズナブルなファッションブランドという立場とファッション性を共存させた唯一無二のポジションを確保しています。例えば、
など、今ではグローバルなブランドとして成長していますよね。
成功事例⑥時代に沿ったアパレル領域の転換|青山商事
青山商事は紳士服メーカーとしてのフォーマル路線から、カジュアル路線へリブランディングしました。
具体的には、オフィスカジュアルや高機能ファッションの提供に舵を切り、スーツが持つ高級で敷居が高いというイメージを払拭しています。
その結果、消費者に自由でゆとりがあるという印象を与え、20〜40代から支持を得ることに成功しました。
成功事例⑦ギャルからさらなるリブランディング|セシルマクビー
セシルマクビーは2000年代のギャルブームで有名になったギャルファッションブランドです。
しかし、派手で露出の多いギャルファッションは令和の価値観に取り残され、同店は売上不調に陥ってしまったようです。
そこで、流行色や機能性を重視した現代の女性が着やすいファッションブランドへリブランディングしたとのこと。
「ギャルのための服」というイメージから「女性のための服」というイメージへの転換に成功しています。いわゆる「ブランド拡張」の成功例と言えるかもしれません。
成功事例⑧「青缶」が世代を超えて愛される施策|ニベア
早期のリブランディングが長きにわたって効果を及ぼすこともあります。
ニベアは1925年に今の「青缶」へリブランディングされて以来、大きなビジュアル変更がありません。
一方で、デザイン缶の販売というように、シーズンや時代に合わせて青缶のデザインを一部変えることで世代を超えた新たなファン層や、コレクターを増やすことに成功しています。
成功事例⑨機能的価値に加えた「美の肯定」という情緒的価値の定義|ダヴ
ユニリーバが販売する石鹸ブランド「ダヴ」は、汚れを落とせるだけでなく、保湿効果も高い製品として注目を集めました。
この強みを活かし、ただの石鹸ではなく「自らの美を肯定できる」美容石鹼へリブランディングしています。
「もっと自分の美を追及してよい、もっと自分の容姿に自信をもってよい」という情緒的価値の提供に成功しています。たかが石鹸、と侮れない強力なブランドだと思います。
成功事例⑩「男性の2日酔い」から「女性の美白」へ刷新|エスエス製薬
「ハイチオールC」で有名なエスエス製薬はリブランディングでイメージアップを図ったことで知られています。
ハイチオールCは、当初男性の2日酔いに効くとして売り出していましたが、売上低迷を受け、リブランディングを実施。
女性層へ訴求し、肌の代謝を助ける成分がシミ予防に有効な点を前面に打ち出して売上改善に成功しています。
成功事例⑪ブランドイメージの統一|ヤンマーホールディングス
歴史のある機械メーカーのヤンマーは、欧米では「船舶エンジン」のメーカー、国内では「農機具」のメーカーとしてブランドイメージが定着しています。しかしグローバルに見てコーポレートブランドが統一されていませんでした。
そこで同社は2013年の創業100年を機に、ブランドイメージを統一させるリブランディングを実施しています。
ロゴ・ウェア・トラクターのデザインを刷新。クリエイティブディレクターの佐藤可士和(さとうかしわ)氏によるビジュアルアイデンティティのほか、有名クリエイターの手によるデザインや技術を投入しました。
新社屋を建設して、インナーブランディングも推進しています。
成功事例⑫ターゲットを子どもから大人の女性へ|サンリオビューロランド
1990年にオープンした屋内型テーマパークであるサンリオビューロランドは、2000年代以降に来場者数が減り赤字経営に陥っていました。
そこで同社は、2014年にリブランディングを実施。ターゲットを、従来の子ども向けから20〜30代の「大人の女性」に転換しました。
ミュージカルにイケメン俳優を起用したり、インスタ映えするレストランメニューを用意したりするなど、コンテンツを見直しています。
結果としてターゲット層が子どもを連れて来場するなど、リブランディング前の2倍近くの来場数を記録しました。
成功事例⑬【弊社事例】採用のリブランディング|株式会社NTTドコモ様
最後にNTTドコモ様における弊社事例を紹介します。
同社ではグループ再編に伴い採用方針が変更され、この変革を採用サイトのビジュアルにて演出しました。
事業説明では3色の円を統合することで3社の連携と新たな挑戦を主張しています。
採用フローでは2社が実施する学生への段階的な選考を、積みあがる赤青の階段で表現。
こうした動きや企業の特徴を活かしつつ、革新性を演出したWebサイト制作を担当しました。
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リブランディングのメリットとしては、次のものが挙げられます。
ブランドに新しく好ましいイメージの風が吹くことで、市場やステークホルダーに新鮮な印象を与えられます。
単なる新しいブランドイメージではなく、これまで信頼を得てきた実績の上に立ち、将来性を感じさせるリアルなイメージであることがポイントです。
リブランディングには目覚ましい効果がありますが、手法を間違えると失敗するリスクもあります。
どのようなケースが失敗するかについて、2つの例を紹介します。
市場が企業に求めているものや、顧客のニーズを無視したリブランディングは、失敗する可能性が高いといえます。
自社がこうなりたいという経営者の意向が強く働き、顧客のニーズやステークホルダーが求める企業の在り方から遠ざかるケースです。
しっかりとした市場のリサーチを行い、従業員と対話し、株主から理解が得られるリブランディングを実施する必要があります。
経営者の思い込みや想像に依存しないよう、コミュニケーションを取ることが重要です。
ターゲットがあいまいなリブランディングは、失敗する可能性が高いといえます。
たとえば「女性向け」というような大雑把なターゲティングは避けるべきでしょう。「すべての人を幸せに」という気持ちでブランディングをしたい場合でも、具体的なターゲット設定(場合によっては複数)は必要です。
ターゲティングに必要な基本項目である年齢・性別・職業・ライフスタイルなどを設定し、そのターゲット層に自社が認知されているかという事実関係も押さえる必要があるでしょう。
リブランディングは、失敗するとダメージが大きいものです。
修正してすぐに復活できるものではないため、実施する際には十分なリスク予測が必要です。
リブランディングが失敗したと判断できる現象として次の点が考えられます。
ブランドイメージが変わることは、市場にも自社内にも、意外に大きく受け止められるでしょう。
新しいターゲット層に受け入れられることは、企業の将来を明るくします。
既存のファンに対しても「自分たちの求めるものが無くなった」という印象を持たれないように注意する必要があります。
既存のファンが「新しいブランドイメージは自分たちに向けてのものではない」と感じたときに、離れる可能性があります。
仮に失敗だと早期に判断して元のブランドイメージやサービスに戻したとしても、他社のサービスを体験したユーザーが戻ってくるとは限りません。
また、SNSのキャンペーンなどで広く拡散した新しいブランドイメージが、市場に残って回収できない状況になります。
リブランディングは「イメチェン」ではなく、新しい未来を切り開く意気込みで行うことが大切です。
今回は、リブランディングの事例やその効果について紹介しました。
今や企業の顔ともいえるWebサイトのビジュアル変更も、リブランディングには有効です。
リブランディングを行い、戦略をビジュアルに落とし込んだ特設サイトの制作なら、ぜひライデンにお任せください。
「エンドユーザーとのエンゲージメントを⾼めたい」「コミュニケーションに⼀貫性を持たせたい」、
「⾼品質なビジュアルデザインを求めている」など、御社の課題をぜひご相談ください。
御社のブランドパートナーとしてご縁が繋がることを、私たちも楽しみにしています。