ブランディング戦略とは、市場において企業やブランドの認知を拡大して、消費者に対して存在価値を浸透させることです。企業の存在価値を強める戦略領域は、大きく分けて3つあります。
広報活動やマーケティング活動でよく耳にする「ブランディング戦略」。言葉は聞いたことがあっても、その意味を正しく説明できない方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、「ブランディング戦略とは何か」「ブランディング戦略で得られる効果は何か」「ブランディング戦略はどのような流れで進めるか」などを詳しく解説します。
事例も紹介するため、ぜひ自社のブランディング戦略を進めるにあたっての参考にしてください。
ブランディング戦略とは、市場において企業やブランドの認知を拡大して、消費者に対して存在価値を浸透させることです。企業の存在価値を強める戦略領域は、大きく分けて3つあります。
3.の「人材市場におけるブランディング」は「採用ブランディング」と呼ばれるもので、これからピークを迎える生産労働人口の減少、内需のパイを奪い合いような厳しい環境が予想される中で、自社と相性の良い人材をいかに採用できるか、ここ数年特に重要視されるようになっています。
市場におけるブランディングは、消費者に対してブランドのイメージを浸透させることを指します。たとえば「クリスマスに食べるチキンといえばケンタッキー」のように、ポジショニングが確立された状態が理想です。市場におけるブランディングが浸透しブランドの価値が高まれば、長期的なファンの獲得と売上向上が見込めます。
社内に向けたブランディングは、別名「インナーブランディング」とも呼ばれます。企業理念や自社商品・サービスに対するイメージを従業員で共有し、内側から企業の存在価値を高める戦略です。従業員のエンゲージメントが向上すれば、提供する商品やサービスの質の向上も期待でき、消費者の満足度も高められる可能性があります。
採用ブランディングとは、より優秀な人材に入社してもらうために自社をブランド化して企業価値を高めることです。また、入社希望者に企業価値やビジョンを知ってもらうための活動を指します。たとえば、インターンシップやリクルーターとの面接、リファラル採用などです。入社後のギャップを減らし、入社意向が強い人材を確保することで、定着率の向上も期待できます。
なぜ企業はブランディング戦略に力を入れる必要があるのでしょうか。私は下記だと思っています。
消費者や社内外のステークホルダーから信頼を得て、市場で優位に立つため
つまり消費者や社内外の人々に対して、企業価値や商品・サービスの価値を発信して、信頼と愛着を持ってもらうよう浸透させる。これにより、企業のアイデンティティやブランドの価値を理解してもらい、競合他社との差別化を図れるようになる。いかがでしょうか。
ブランディング戦略で期待できる効果・メリットには、以下が挙げられます。
単に消費者に対して自社商品・サービスを知ってもらうだけでなく、ブランドの付加価値を創出(見える化)することで、消費者から信頼され、好きになってもらうことができる。人間関係と同じですね。その結果、競合他社に負けない、市場における優位性を確立できるようになります。
ブランディング戦略では、自社の商品・サービスの強みや弱みを追及して分析します。そのため、アピールできるポイントが明確になり、競合他社との差別化が期待できます。もしくは独自のポジションが確立できるでしょう。差別化ができれば単なる価格や機能だけが選ぶ理由とはならず、「意味」に対して対価を払ってもらえるので高単価の商品でも購入してもらえる可能性があります。
差別化を図る際に言語化した独自の魅力が正しく消費者に伝われば、商品やサービスの期待が外れる可能性を防げます。期待通り、もしくはそれ以上の満足度を消費者に提供できれば、信頼や愛着がうまれるでしょう。また、期待通りの商品・サービスを提供する企業であると安心感も与えられます。
継続的なファンになってもらうには、何度も満足度の高い商品やサービスを提供し、信頼度や愛着を高めることが必要です。一貫したコンセプトでブランディング戦略を実施すれば、より効果的にブランドイメージを浸透できるため、競合他社と比べることなく長期的に自社商品を選んでもらえる可能性が高まります。
ブランドが確立すれば、商品やサービス自体がブランド価値を常に高めることも可能です。たとえば、ディズニーリゾートが挙げられます。ディズニーリゾートの世界観に共感した消費者は、特に広告を見ていなくても何度もディズニーリゾートに訪れ、チケットを購入します。なぜなら夢の国というブランドコンセプトが揺るがず、消費者が夢の国での時間を実体験するためです。このようにブランディング戦略が成功すれば継続的に利益が得られる仕組みを作れます。
従業員がブランドの意義や、ブランドのために働く意味を理解し、ブランドのファンになることを期待できます。そうなれば、ブランド(企業)への帰属意識が高まり離職者が減少するでしょう。
事業の目的に向かって主体性を持って行動でき、チャレンジする意欲も生まれます。その姿勢や仕事の結果が顧客にも伝わり、顧客満足、ひいては売上向上に貢献するのです。
ブランディング戦略によってブランド(企業)が競合に対して差別化され、認知が広まることは、人材採用のターゲットとなる求職者の関心を引くことにつながります。
優秀な人材は魅力的なブランドに集まるため、ブランドの優位性が客観的に明らかになれば、質の高い人材を採用しやすくなります。また、あえて企業の方からブランドの価値を能動的に訴求しなくても人材が集まるようになり、採用コストを抑制できるでしょう。
ブランドの認知度が高まるとともに売上が拡大すると、株主や取引先、金融機関からの印象が良くなります。投資を呼び込み、融資も受けやすくなるでしょう。
インナーブランディングによって理念やパーパスが社内に浸透し、外部にも伝わることでステークホルダーからの信頼を集め、期待されるようになります。
企業のブランディングに成功すると経営が安定化し、新しい取り組みや新規開発のリスクの低減化が可能となるでしょう。
ここでブランディング戦略における注意点を少し。
ブランディング戦略を実行するにあたっては、相手を痺れさせるブランドコンセプトでなければ意味がありません。提供する価値をきちんと設計したうえで、価格設定やブランドロゴ、あらゆる接点における顧客体験を検討することが重要です。
また、ブランドを確立するまでには、長期にわたっての取り組みが求められます。時間的なコストを踏まえたうえで、根気強く取り組む必要があります。
ブランディングは「消費者から信頼を得て、ブランドの価値を高めること」が目的です。一方で、マーケティングは「売れる仕組みを作り、売上を上げること」が目的です。企業の成長には、相互の連携が必要不可欠ですが、混同しているとアプトプットや目標指数の設定で混乱する可能性があるため注意しましょう。
ブランディング戦略で結果を出すには、相応の期間を要します。なぜなら、ブランドを認知してもらい、イメージを浸透させるためには、何度も消費者とコミュニケーションを重ねる必要があるためです。長期にわたれば従業員・市場・顧客のニーズも変わるため、常に未来を見越したブランディングを実施する必要があることを認識しておきましょう。
ブランドコンセプトは、いわゆる他社と差別化できるポイントです。ブランドコンセプトが他社と似ていれば、自社に魅力を感じてもらう前に価格競争で負けてしまいます。そのため確実にブランドを強化するためには、環境分析や提供価値の設計を入念にして、自社にしか提供できない価値を見出すことが重要です。
そしてブランディング戦略は、非常にざっくり書くと以下のような流れで進めます。
しっかりと設計した価値を具体化する”ブランドコンセプト”を開発する際は、事前に市場や競合、自社の強み・弱みなどを多角的に分析することが欠かせません。また、定期的に消費者へのアンケート調査やWeb広告のアクセス解析、商品購入後の口コミ評価などでブランディング効果を測定・分析して、戦略を微調整(大きく変えることはしてはいけません)していくことも重要です。
ブランドコンセプトを明確にするには、外部環境と内部環境を分析することが重要。外部環境とは、トレンドや競合など自社を取り巻く環境を分析することです。3C分析やPEST分析が用いられます。一方で内部環境の分析では、主にSWOT分析を用いて、自社の商品やサービスの強みや弱みの分析をします。客観的な視点で分析し、市場における立場を把握してください。
環境分析の結果からブランドの優位性を客観的に把握し、ブランドの価値を捉えます。
価値はユーザーにとっての価値であることが重要で、どのようなユーザー層がその価値を理解しニーズを持っているかを明確に把握します。
ターゲットとなるユーザー層を中心にブランディング戦略を展開できるようにしましょう。また価値が陳腐化しないように一定期間を置いて見直し、新しいニーズや価値観を取り込める柔軟性も必要です。
ブランドコンセプトとは、「商品やサービスを通して消費者がどのようなメリットが得られるのか」を言語化したもの。消費者からの共感や愛着を持ってもらうためにもブランドコンセプトは重要です。消費者がブランドに抱くイメージと、ブランドが消費者に届けたいメッセージの間に生じるずれを減らすためにも、ブランドコンセプトは明確に設定しましょう。
ブランドコンセプトを元に、消費者との接点となるすべてのチャネルでクリエイティブを開発します。ネーミングやコピー、ビジュアルなどのコアなクリエイティブを様々なメディアに展開します。このブランディング実施の工程は、ブランドイメージが正しく消費者に伝わるように、企業が「こうみられたい」というイメージと消費者の心の中のイメージを合わせていく作業と言えるでしょう。
長期間を要するブランディングにおいて、少しでも効率と効果を高めるためには効果測定が欠かせません。数値化が難しい分野ではありますが、目標指数(KPI)を設定し、定期的に効果測定と分析をしましょう。KPIには、たとえば認知率やNPSなどが挙げられます。分析内容から課題を見つけ、ブランドコンセプトの見直しやアウトプットの改善を繰り返しましょう。
さらに、ブランディング戦略で意識したいポイントがいくつかあります。
上記のなかでも、「消費者・顧客視点でブランド体験を考える」ことについては、特に意識したいポイントです。どれだけ製品やサービスが魅力的なものであっても、相手がそれを魅力に感じなければ、ブランドの確立にはつながりません。消費者・顧客の視点に立って考えることで、本当に質の高いブランド体験は何か?が見えてくると思います。
以前弊社代表の井上に、ブランディング戦略について聞いたことがあるのですが
という中国故事のようなユルい回答をもらったことがあります。
海外へのブランディング戦略が成功し、日本有数のブランドになった「ユニクロ」の事例を紹介します。
ユニクロは、海外進出とともに『LifeWear』というブランドコンセプトを確立させました。LifeWearとは「あらゆる人の生活を、より豊かにするための服」を意味します。
さらに、そのコンセプトの中には、日本独自の品質やこだわりなどの強みを押し出す意味も含まれています。モデルには、世界中のトップアスリートを起用しました。
このように、シンプルで分かりやすいコンセプトと、海外で影響力のあるモデルを起用することで、海外へのブランディング戦略を成功させたのです。
海外でのブランディング戦略を成功させたユニクロですが、実は過去に戦略を失敗してしまった事例もあるようです。
ユニクロは、過去に野菜事業へ新規参入したことがありました。しかし結果的には、数年で事業を撤退することとなってしまいました。
弊社代表の井上曰く、当時20代だった井上が働いていたデザインIT会社の社長も、「野菜?作る?なんて素晴らしい視点だ!」と感激されていたようです。
原因としては、ユニクロの強みである「企画から生産、販売までの一貫したビジネスサイクル」を活かしきれなかったことなどがあるのかもしれませんが、数年後には『GU(ジーユー)』ブランドで業績を上げて、大成功を収めています。
ここからは、以下の5つのブランディング戦略について、有名企業の成功事例をご紹介します。
トータルヘルスケアカンパニーのジョンソンエンドジョンソンは、1943年に掲げた理念「我が信条(Our Credo)」のなかで次の4つの社会的責任を明確にし、今に受け継いでいます。
同社は1980年代に第三者による薬物混入によって発生した死亡事件に際して、顧客の安全を第一に考え情報を公開し、製品を回収した経緯があります。一連の責任ある対応が象徴的なエピソードとして従業員に認識されています。
従来のルーペは主に高齢者が使用し、片手に持って新聞などを読むイメージが定着していました。
ハズキルーペはこのイメージを払拭するように斬新なデザインと機能性を持ったメガネ型ルーペを開発し、中高年から若い世代にかけての複数の有名タレントをCMに起用して、大々的に広告を展開しました。
これによって、従来は価値に気づかなかった若い世代にも「自分たちも対象だ」と認識され、ユーザーが増加して市場が拡大したのです。
長崎のハウステンボスは1990年代には多くの来場者で賑わいましたが、2003年に破綻したのち再建されました。欧風の街というだけでは集客できなくなった反省から、テーマパークとして楽しめる場所としてリブランディングが行われています。
若年層や韓国・台湾・中国などの近隣国からの観光客をターゲットとして、イルミネーションイベント・クルーズなどを企画。さらに敷地内に企業を誘致するなど、買い物やビジネスを目的とした人々も集まる場を創り出しました。
マクドナルドの主役はクルーと呼ばれる従業員です。幅広い年代のパート・アルバイトを採用し、徹底した教育を行って、ブランドの理念や従業員の行動指針を企業全体に浸透させているのが特徴です。
近年は採用サイトを充実させています。企業メッセージ、クルーの仕事や特典、教育体制(育成プログラム)について分かりやすく紹介し、親しみのあるコンテンツで構成。個々のライフスタイルに合わせて楽しく働けるイメージで採用ブランディングを展開しています。
アサヒビールはグループの理念「Asahi Group Philosophy」のもと、インナーブランディングを徹底し、一人ひとりの従業員が組織の方針を自分ごととして捉えるように理念の浸透を図っています。
「会社と個人の成長を両立する企業風土の醸成」を従業員の行動指針に掲げ、全国の支店長に対してブランド価値の伝え方をレクチャーし、営業の意識改革を求める「支店長ワークショップ」を実施しています。
ここからは、ブランディング戦略としてサイト制作を行った弊社での事例を紹介します。
こちらは、製品ブランディングの事例です。
感覚的に製品価値を理解できるコピーとビジュアル、さまざまなシーンで自由に使えるというプロダクトのコンセプトでビジュアルブランディングを強く意図しています。
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こちらは、PRツールを制作してブランディングを実施した事例です。(※)
マッハバイトの「すぐにバイトが決まる」というコンセプトと、「人工知能(AI)が人間の能力を超える」というシンギュラリティをかけ合わせたブランディング戦略のWebサイト制作を担当しました。
将来、さまざまな仕事が人工知能によって奪われてしまう前に、すぐに仕事が見つかるマッハバイトに登録しようというコンセプトのWebサイト。人工知能に詳しい落合陽一氏に登場いただいたこともブランディングにおけるポイントの一つです。
(ライデンではWebサイト設計/制作のみ担当しています)
(※)サイトはすでに公開終了しています。
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弊社代表による著書「ロジック×感動で成功するWEBブランディング」(幻冬舎メディアコンサルティング発行)は、価値の視覚化を課題とする企業のブランディング戦略に、一つの考え方を吹き込む内容です。
モノやサービスが飽和した時代、いかにブランディング(差別化)するかという課題に対してWebブランディングの有効性を解説します。さらにビジュアルやUIのデザインによって感動を生み出す「ロジック×感動」のベストプラクティスを紹介しています。
ブランディング戦略でお悩みのある方は、ぜひライデンまでご相談ください。「戦略」と「クリエイティブ」のハイブリッドで、御社の強靭なブランディング戦略を支援します。
とくに弊社の強み(UPSですね)といえるのが、高いレベルのビジュアルデザインです。大手企業のWebサイトからデザイン性の強いプロモーションサイトまで、幅広く手がけた実績を持ち、皆様にも気持ちよく、ライデンへ愛着と信頼を持っていただけると思います。
「エンドユーザーとのエンゲージメントを⾼めたい」「コミュニケーションに⼀貫性を持たせたい」、
「⾼品質なビジュアルデザインを求めている」など、御社の課題をぜひご相談ください。
御社のブランドパートナーとしてご縁が繋がることを、私たちも楽しみにしています。